Interview 2025

by Yuichiro Hosono 細野雄一郎

桂朋子 & ギヨーム・グロバール インタビュー  

「こんにちわ。おひさしぶりです。おげんきでしたか?」

一年ぶりに会うフランス人チェリスト、ギヨーム・グロバールさんの日本語がとても上達していることに驚きました。

フランスを拠点に活動するバイオリン&チェロのデュオ『LA PAUSE MUSICALE(弦と遊ぶなかやすみ)』のコンサートが2025年5月18日(日)、5月24日(土)に開催されます。
今年で第7回の日本公演を迎える桂朋子さんとギヨーム・グロバールさんご夫妻に、あらためてお話しを伺いました。

ギヨーム(チェリスト ギヨーム・グロバール。以下、”ギヨーム”と表記):「オランダで朋子と知り合った時は、彼女とコミュニケーションを取るために一生懸命英語を勉強しました。そして今回は、来日前、5ヶ月間集中的に日本語を勉強してきたのです」。

今回の日本公演では、ギヨームさんの流暢な日本語によるMCを聴くことが出来るのでは?と密かに期待を寄せています。

長年使用してきた道具の変遷

ギヨーム:「今回もね、自分が使っているチェロをフランスから持ち運んだんだ。人間が飛行機に乗るよりは少し安いけれど、それでも出費が痛い・・・(苦笑)」

朋子(バイオリニスト 桂 朋子。以下、”朋子”と表記):「ギヨームは今まで10年〜15年長らく使ってきたガット弦(羊の腸を素材とした弦)からスチールに変えて、今回演奏をします」。

※正確には2本をスチールに変え、残り2本はガットのまま。

——ガットとスチールで素材が違うことは分かりますが、演奏家にとってはどのような違いが生じるのですか?

ギヨーム:「ガットの音は、その時々で左手と右手の微妙な調整が必要で、ある意味その不安定さをコントロールすることがとても面白いのですが、今回のプログラムを考慮し、音程を重視することにフォーカスしてスチール弦を採用することにしました。スチール弦は一度調弦を施すと音程が比較的長い時間ピタッと安定します」。

【今回公演のプログラムについて】

——今回演奏する4人の作曲家たち、アルテュール・オネゲル(フランス・スイス両国籍 1882.3.10-1955.11.27)、ジョージ・クラム(アメリカ 1929.10.24-2022.2.6)、エリザベト・ジャケ・ド・ラ・ゲール(フランス 1665.3.17-1729.6.27)、ジェシー・モンゴメリ(アメリカ 1981.12.8-)は、時代や作風にもかなり幅がある印象です。

これらの楽曲を選んだ理由は何ですか?

朋子:「まず大前提となるのは、現時点で私たち自身がシンプルに彼らの音楽が好きだからです。そして、彼らの生きた時代や音楽観、作曲の仕方など一致するものがないように思えるのですが、楽譜を読み込んで練習を重ねていくうちにLINKする箇所を幾つも感じられるようになりました。そうやって私たちなりに彼らの音楽を”解釈”した点をコンサート中のMCも交えて紹介していきたいと思います」。

ギヨーム:「よく『君たちは自分の音楽(=2人が作曲した楽曲)は弾かないの?』と聞かれることがあります。その問いに対する答えは、『イエス』なんだけれど・・・、ただ僕らには過去作曲された『カバー』をやっているという感覚は全くなくて、誰かが書いた曲だけれど、それを掘り下げていくうちに僕ら自身の解釈でその音楽を作り上げていく。そういう試みの繰り返しのような気がするんだ。更に理想を言えば、そうやって僕らが”創り上げた”音楽を聴いてくださる方々に、聴く人たちなりの解釈も重ねて音を楽しんでもらえたら、と思っています」。

【Fameであることは重要ではない。なぜならば音楽を追求することそのものが面白いから】

——今回取り上げる4人の作曲家はいわゆるポピュラー音楽からは遠く、どちらかと言えば玄人好みの位置付けにあると思います。

ギヨーム:「Fame(有名であること)かどうかは実は僕らにとってあまり重要なことではありません。おそらくJ・S・バッハも有名になるためにたくさんの曲を書いた訳ではないと思います」。

朋子:「今回取り上げるジャケ・ド・ラ・ゲールは、ルイ14世に愛されたチェンバロ奏者で、彼のためだけに書いた音楽を献上していた作曲家でもあります。当時のフランスバロック音楽界では言わばFameな存在だったと想像しています。ただ、彼女の没後300年近くが経ち、ポピュラーの中身が時と共にだいぶ変化していった結果、今はあまり知られていない存在になってるだけのことだと思います」。

ギヨーム:「昔、オーケストラに居た時、ブリテン(ベンジャミン・ブリテン イギリスの作曲家 1913.11.22-1976.12.4)のチェロ組曲に取り組んだことがありました。6ヶ月間、一生懸命練習しても一体彼が何を伝えたかったのか、さっぱり理解出来ず・・・ところがある時『あ!こういうことだったのか!』と閃きに近い感覚を覚えたのです。何をやったから、どういうプロセスを踏んだからその気づきに至ったか、というのははっきり分からなかったのだけど、まるでパズルのピースがはまったようにね。多分、ニュートンが、木から林檎の落ちる様を見て地球には引力がある、と察したのもこんな状況だったんじゃないか?と」。

——その閃きに近い感覚をどうしたら得られるのか?理論的に解釈しようとするととても難しい気がしていますが、そういう境地に辿り着くまでに心がけていることなどありますか?

朋子:「技術的には譜面の指示通りに身体が動く状態にしておくことが前提で、テクニックをなるべく忘れて、音楽のその瞬間瞬間を掴み切ることに集中する、というか。上手く説明できずにすみません。自分のできること。頭と心はコントロール出来るように努め、後は何か事が起きた時に身体が反応出来るか?いかに空っぽの状態で居られるか?この点については精神面が強く作用するように思えます。もちろんテクニック的に右手左手がささっと動作出来るよう日頃のトレーニングが大切なことは言うまでもなく。同時にその前にパニックに陥ることの無いよう、なるべく音楽から集中力が抜けることの無いようにという心の強さが大事なのです。私たちは常にそういう部分に注力しながら音楽に接していると思います」。

ギヨーム:「夢路(ゆめじ ギヨームさんと朋子さんの一人息子)のバレーボールの先生がね、こう言ったんだ。『ボールは自分の構えているところに飛んできてくれない。ボールが飛んでくるところに自分の身体を動かして』この先生からの言葉に音楽にも通じる真理があると感じたよ」。

【ダンスミュージックの不思議から音楽の魅力を再認識】

——去年の日本でのコンサートを終えて今日までの一年間、何か面白い出来事はありましたか?

朋子:「住んでいる地域の組合が小さなバーを購入して、そこに毎週金曜日、色んな人たちが集まるようになりました。私たち音楽家だけではなく、地域で働く配管工や陶芸家など。約60人ほどが入れる場所で、本当に面白い人たちがいつも集まってきます。そこでのコンサートは、年間で6人の画家たちがオープニングのパフォーマンスを披露する際、音楽をつけるという催しでした。その時の1人目の画家と私たちラ・ポーズがコラボすることになりました」。

ギヨーム:「そこで曲名や作曲家を告げることなく、バルトークのルーマニア民俗舞曲を2人で演奏したんだ。その施設は、1階がバーで2階が演奏スペースになっているんだけど、最初は様子を伺うように聴いていたオーディエンスたちが演奏を聴くうちにノリノリになってきて、飛んだり跳ねたり!!1階に居たバーテンが『床が抜けるんじゃないか?!』と焦っていたようでとても痛快だった。大半の人が、この音楽を作曲したのはバルトークで『ルーマニア民俗舞踊』という曲名だとは知らなかったはずなんだけど、やっぱりこれはダンスミュージック(=舞曲)なんだな、って。曲に関する事前情報が無くても、人々を熱くさせ、身体を動かしてしまう不思議な力があるんだ、と身を持って体験したよ」。

朋子:「そのコンサートが終わった後、あるお客様からこんなお話しを伺いました。『もう10年ぐらい前からあなたたちがこの周辺で演奏しているのは知っていました。でもバイオリンとチェロの”クラシック”だから僕たち向けの音楽じゃないと思っていたんです。でも今日初めて君たちの音を聴いて、ジャンルがどうこうじゃなく、とても楽しくてエキサイトしました。これからあなたたちの音楽を聴くのがとても楽しみになりました』。そんな言葉を貰ってとても嬉しい瞬間でした。その後、彼らはこのバーとは別に開催されるラ・ポーズのコンサートにも来てくれるようになったんです。クラシック音楽はお行儀良くて退屈というラベルをラ・ポーズが剥がしていきたいものです」。

——お二人のデュオ演奏としてのラ・ポーズ・ミュージカルコンサート(5/18、5/24)の後にも今年はステージが用意されているようですね?

朋子:「はい。6/15(日)には長野県の御代田の『長野エコールみよた あつもりホール』で。その次は6/21(土)千葉市中央区の『千葉アートサロン 2階』で行います。私とギヨームのバイオリン・チェロ以外に、ピアノ(ソーニャ・久美子・リー)が加わりトリオ編成になります。ピアノが入ると格段に音の幅が広がって、今からとても楽しみなんです」。

※千葉アートサロンは全80席で要予約制。長野は予約不要です。
https://tomokokatsura.com/2025/03/21/弦とピアノのなかやすみ/

——最後に第7回となるラ・ポーズ・ミュージカル日本公演(千葉・東京目黒)に向けて一言お願いします。

ギヨーム:「今年のプログラムは本邦初の編曲なしです。あまり知られていない作曲家が集うパーティだけど、そこに集まる4人の作曲家たちは皆良き人々です。皆様が楽しみにワクワクしながら来てくれると嬉しいです」。

朋子:「副題の”弦と遊ぶなかやすみ”とあるように、弦の音に触れて遊んで、皆様が心を休めるひと時になれば幸いです」。

“作曲家とは、過去から紡がれた全ての音楽が持つ魂と、自らの人生の体験、そして想像力とを融合させる体現者である”

今回のコンサートで演奏される作曲家の一人であるジョージ・クラムが遺した言葉を朋子さんが意訳した一節です。

クラムはここで主語を”作曲家”としていますが、過去から紡がれてきた音楽が持つ魂に自らの人生体験や想像力を融合させていく者こそが真の音楽家であると筆者は捉えます。

今年はどんな音の楽しみを私たちに届けてくれるのか?

【第7回 LA PAUSE MUSICALE(弦と遊ぶなかやすみ) 日本公演 コンサート概要】

アーティスト:
桂朋子(バイオリン)
ギヨーム・グロバール(チェロ)

プログラム:
A. オネゲル           バイオリンとチェロのソナチネ
G. クラム            無伴奏チェロソナタ
E. ジャケ・ド・ラ・ゲール  バイオリンとチェンバロのためのソナタ第1番
J. モンゴメリー                 バイオリンのためのラプソディー第1番

開催日時・場所:
2025年5月18日(日) 千葉市生涯学習センター 2Fホール
開場:14時/開演:14時30分

2025年5月24日(土) めぐろパーシモンホール 小ホール
開場:18時45分/開演:19時15分

料金:
一般 3,500円/学生 1,000円 (両会場共通)
*チケットはこちらのリンクからお求めいただけます。

-完-

インタビュアー・文・写真 
細野 雄一郎(ほその ゆういちろう)
@u1rohosono

デザイン・構成
姜 順花(カン スナ)
@soona_kng

La Pause Musicale
Instagram @lpmusicale
Facebook https://www.facebook.com/lapausejp/

Interview 2024

by Yuichiro Hosono, April 2024

桂 朋子 & ギヨーム・グロバール インタビュー

「いや・・・、実にシンプルな言葉になってしまって申し訳ないのだけど・・・聴きに来てくださるオーディエンスには、ただただ”Be happy”でいてもらえるようベストを尽くします」(チェリスト ギヨーム・グロバール。以下、”ギヨーム”と表記)
豊かにたくわえたあご髭を指でなぞりながら、思慮深い面持ちで慎重に言葉を選びながら語るフランス人チェリストの表情にはどこか神々しさが漂います。
「コンサートに来てくださるだけで私たちは本当に幸せ」(バイオリニスト 桂朋子。以下、”朋子”と表記)

フランスを拠点に活動するバイオリン&チェロのデュオ『LA PAUSE MUSICALE(弦と遊ぶなかやすみ)』のコンサートが2024年4月13日(土)、4月19日(金)に開催されます。
今年で第6回の日本公演を迎える桂朋子さんとギヨーム・グロバールさんご夫妻にお話しをうかがいました。


【前回の公演から1年。最愛の息子が始めた音楽を通しての気づき】

——昨年の公演から丸1年経って何か心境の変化はありましたか?

ギヨーム:「年が明けた1月あたりからの3ヶ月が本当に目まぐるしいほど忙しくて・・・急な引っ越しを迫られたり、息子の学校が閉鎖するかもしれないとか。とにかくこの3ヶ月が濃厚過ぎて1年をまとめて振り返る余裕がないよ(苦笑)」

朋子:「色々急なことが重なって、あぁ今年はこういう大変な年なんだな、って思いました。でも元の住居からそう離れてないところに良い引っ越し先が見つかったし、何があっても最後は何とかなる!とも思えましたよ」

ギヨーム:「そういえば、半年前から息子の夢路(ゆめじ、現在8歳)がドラムを始めたんだ。彼の練習に付き合うようになり、もう一度レッドツェッペリンやビートルズを聴き返してみた。今まで何回も何百回も聴いてきたはずなのに、僕はドラムというパートをきちんと聴いていなかったことに気づかされたよ」

朋子:「面白いのは、夢路は音楽を聴く時にドラムの音を注意深く聴いているようで、私はバイオリンという楽器をやってるせいか、メロディを中心に聴いていることに気づきました。何度も聴いて自分が分かりきっていると思っていた楽曲でも見方や聴き方を変えると違ったものが見えてくる。あるいはもっと深く理解する。そう考えると私たちの音楽を聴いてくださるお客様もその時々の心境によって、同じバッハでも異なって届く場合があるのかな?と思ったり」

ギヨーム:「生演奏なら聴いてるその時々で違うのは分かる。でもパッケージになったCDのように固定化された音楽でさえ、何百回と聴いて分かりきっていたはずのものが、今までに無かった影響や刺激を受けることで違うものへと変化していく。昨日の僕と今日の僕はどこ違っている。そして明日もまた何かが変わる。自分自身も絶えず変化の中で生きている」

さすが哲学に造詣の深いフランスの人であるギヨームは、概念を言葉にするのが非常に巧みです。そのことについて褒めると、

ギヨーム:「いや僕もトレーニング中なんだ(笑)。翻って日本には、俳句のように限られた文字数の中にたくさんの意味を込める素晴らしい表現方法があるよね?フランスでも日本でも深く考えてアウトプットする人もいれば、シンプルな人もいるということかな」


【古典と現代音楽を共存させた本公演の魅力、聴きどころ】

——今回の公演で古典と現代音楽を同時に取り上げようと思った理由や聴きどころをおしえてください。

ギヨーム:「バッハの無伴奏チェロ組曲の第2番は、僕自身、初のパフォーマンスになります。それがゆえに今回は自分の楽器をフランスから持ってきたんだよ。運賃がバカにならないくらい高くてね。出費が痛かったけど・・・(苦笑)。初めての日本公演でバッハの無伴奏を演奏した時は第5番を取り上げて、お客様から高い評価を得たのが今回再びバッハを選んだ理由かもしれない。無伴奏チェロ組曲というと第1番はとても有名なので、今回は第2番をやってみようと思ったんだ。僕もソロを弾くので、朋子にも一人で何か弾いてほしいとリクエストしたところ、彼女はパスカル・ル・ブフの音楽を見つけてきたよ」

朋子:「当初バロックで素敵なソロ曲がないかな?と色々探していたところ、モダンなソロを偶然見つけてしまったんです。それがパスカル・ル・ブフというアメリカ人の作曲家です。彼は原則、楽譜提供にデジタル配信はしない主義のようで、紙の楽譜を郵送する範囲がアメリカ国内に限定されていました。大晦日の夜、思い切って彼にメールを送りました。日本公演で演奏させてほしい、と。するとデータ複製をしないことを条件に、デジタルの楽譜を特別に提供してくれました。その後も質問などメールを送ると直ぐに丁寧な返信をくれて、まだ会えたわけではないのですが、彼の誠実さがよく伝わってきました」


【 It’s music. Not so different. 】

後世にあまり知られていない300年前の音楽を発掘して弾いてみるのも楽しいし、魅力的な現代音楽に偶然出会うのもまた楽しい。

そして現代に書かれた曲だからといって、必ずしも自分たちに近いというものでもない、とお2人は言います

ギヨーム: 「例えば具象画と抽象画は、同じ”絵”だけれども、何をどうやって伝えるか、表現の仕方に違いがあるよね?音楽にも似たようなところがあって、古典、現代に関わらずそれぞれの楽曲で音の出し方や響かせ方が違ったりするんだ」

朋子:「クラシックとして現代まで残ってきた音楽は、様々な点で優れているからこそ今こうして耳にすることが叶うわけです。そこを深掘りしていくことは音楽家としてもちろん大切です。それと同時に今を生きている現代の作曲家の楽曲を、今を生きてる私たちが演奏し、どんどん循環させることに意義があるように思えます。何かこう音楽の中を一緒に生きているような・・・。理由をはっきり伝えられないのですが、それもすごく大切なことだという直観があります」

“音楽の父”と称されるヨハン・セバスチャン・バッハは、カペルマイスターという言わば教会における音楽監督のような仕事を生業としていました。幾つもの教会の仕事に従事する傍ら、バッハは宗教音楽以外の名曲も多く後世に残したことは今さら語るべくもないことですが、彼が優れた音楽家として名声を得たのは、没後だいぶ経ってからのことでした。

同じ音楽家として今を生きる朋子さん、ギヨームさんが、いい音楽ならば生きている間に評価されてほしい、と願うのは自然なことなのかもしれません。


【届いた!!音楽に無縁だった村人の歓喜に震える】

——今回の日本公演で観客の皆様に届けたい思いがあればおしえてください。

ギヨーム:「音楽、特にコンサートは、Composer(作曲家)、Performer(演奏家)、そしてAudience(観客)の3要素で構成されています。一つでも省くと音楽として成り立たない」

朋子:「私たちはフランスでは舞台を作らずに、聴いている人たちとフラットな立ち位置で演奏することが大半です。昨年のめぐろパーシモンホールでは同じようなアプローチを試みたのですが、後ろに座っている方々にはチェロの手元が見えなかったり、長時間パイプ椅子に座っていることでご高齢の方々には苦痛を与えてしまったり・・・。反省しました。私たちのスタイルを貫くよりもお客様に心地よく聴いていただくことが第一優先なので、今回は改善します」

※通常、めぐろパーシモンホールはステージ形式の会場で常設のソファ座席になっている。

ギヨーム:「今年の1月、僕らの住むシャンパニエ=サン=ティレールという村の役場で僕の弟夫婦なども加わり、コンサートをしたんだ。それまで音楽には全く無縁な村人(50代の男性配管工)がポルトガル人のガールフレンドと一緒に来てくれてね。彼にとってはクラシックのコンサートは初めての体験で、それまでは、クラシック音楽ってなんて難解で退屈な音楽なんだろうと思っていたみたい。でも終演後、目を輝かせながら僕らに寄ってきて、どういう言葉で喜びを伝えたらいいのか、しどろもどろに苦笑しながら”You played good.”と幾度も唱えながら僕の肩を優しく叩いてくれた。とにかくとても彼は楽しかったんだな、ということが伝わってきた。そして、”よし!届いた!!”と幸福感に満たされ心が震えたよ」

朋子:「私たちの目指すゴールは、音楽を知らない人たちにも音楽の楽しさを届けられる役割を担うということ。もちろん元々音楽好きな人たちに喜んでいただくのもとても大事です。それと共に、音楽を詳しく知らなくても聴いてくれた方々がそれぞれの味わい方で楽しんでいただける。そんなきっかけを私たちがお届け出来たら本望です。だから日本でも大きなコンサートホールだけじゃなく、街の公民館などでも演奏してみたいのです」

インタビュー中、彼らの発する言葉の中に『届ける』というキーワードが何度も登場します。

単に音楽の高い技術を披露するに止まらず、お客様の心に残る何かを届ける。これこそが、LA PAUSE MUSICALEの追求する境地である、とあらためて実感しました。

暖かさが背中を押すように外へ出たくなる春、4月。

誰もが“Be happy”になれる音楽会の幕が間もなく上がります。

【LA PAUSE MUSICALE(弦と遊ぶなかやすみ) 日本公演 コンサート概要】

アーティスト:
桂朋子(バイオリン)

ギヨーム・グロバール(チェロ)

プログラム:
J.S.バッハ 『無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調』
W.A.モーツァルト 『ピアノソナタ第12番 ヘ長調 K.332』
Pascal Le Boeuf  『Imp in Impulse for solo violin』
Jessie Montgomery 『Duo for violin and cello』

開催日時・場所:
2024年4月13日(土) 千葉市生涯学習センター 2Fホール
開場:14時/開演:14時30分

2024年4月19日(金) めぐろパーシモンホール 小ホール
開場:18時45分/開演:19時15分

料金:
一般 3,500円/学生 1,000円 (両会場共通)

-完-

インタビュアー・文・写真 
細野 雄一郎(ほその ゆういちろう)
@u1rohosono

デザイン・構成
姜 順花(カン スナ)
@soona_kng

La Pause Musicale
Instagram @lpmusicale
Facebook https://www.facebook.com/lapausejp/

Interview 2023

桂朋子&ギヨーム・グロバール インタビュー 

La musique est un merveilleux professeur pour moi.
(音楽というのは、僕にとっ て素晴らしい先生なのです)」
フランス人チェリストが発した一言にハッとさせられました。

「どんなに一生懸命練習してもいつ間違えるか?あるいはいつ凄い音が出せるか?思うようには プランニング出来ません。これはまさに人生と同じ」(ギヨーム・グロバール) 

今回で第5回目を迎えるLA PAUSE MUSICALE(弦と遊ぶなかやすみ)の日本公演。 東京都、千葉市の2箇所でコンサートが開催されます。それに先立ち、バイオリニストの桂朋子さんとチェリストのギヨーム・グロバールさんにお話を伺いました。 

二人の出会い。そしてオランダでのオーケストラ修行時代

桂朋子さんはジュリアード音楽院(*1)修士課程取得後、ヨーロッパへ渡りオランダ 室内管弦楽団(*2)に入団します。 入団間もない3ヶ月後、同楽団のチェロ奏者オーディションに立ち合います。 いかにも多くの場数を踏んだ凄腕たちの中に一人、異色のチェリストがいました。

「長髪に身なりもどこかラフな感じ。おまけに年齢もかなり若そう…他の奏者たち と比べるとこの人は変わってるなぁという印象でした。でもね、チェロを弾き始め たら凄かったんです!自由自在に4本の弦と弓を操る。彼から”音楽”そのものが聞 こえてきました」(桂朋子) 

若くしてオーケストラの枠に収まらないギヨームの才を見抜いたオランダ室内管弦 楽団は、正式に彼の入団を認めます。 その後10年間、オランダで研鑽を積んだ2人に音楽家としてのターニングポイント が訪れます。

現在のLA PAUSE MUSICALEの原点を見出したきっかけ

アムステルダムにあるがん専門医療施設から出演オファーが入り、当時彼らのカルテットで演奏し ていたシューベルト(*3)作曲弦楽四重奏第14番「死と乙女」を選曲することになりました。

「正直メンバー皆がとても悩みました。終末期を迎える方も多くいる施設でこの曲を弾くことは どうなんだろうか?と。ただ楽曲そのものはとても素晴らしいので、曲名は告げずにシューベル トをカルテット演奏する、ということでステージに臨みました」(朋子) 

「この時、私たちは音楽の持つ”力”を肌で感じたのです」(ギヨーム) 

生と死に日々向き合う患者さんたちを前に演奏し、とてつもない空間のエネルギーを感じ、互い (演奏家と聴き手)に引き合うものがあった、と当時の印象を朋子さんは述懐しています。

「大きな演奏会場、何百人も収容する大ホールで演奏するのとは全く違う特別な感情が湧きまし た。こういう音楽の在り方があるんだな、って。ある意味、音に嘘がつけないというか…これが 本当の音楽だ!その時はっきりと感じました。あの場所で感じた音楽の”力”とは、あらゆる壁を 取り払うこと。患者、医師、看護師、お見舞いに来ている人たち、そして私たち演奏家。皆がそ れぞれ違う立場に居ても皆一つの音楽の中に居る。そこに垣根なく皆が共存しているのが何とも 言えない幸せな時間でした」(朋子) 

世界中の都会には素晴らしいオーケストラが既にたくさんある。そこは彼らに任せて、私たちは 音楽のないところに音楽を届けに行きたい。これこそが私たちに与えられた音楽家としての使命 だ。 そう強く感じた2人はオランダ室内管弦楽団を退団し、ギヨームの母国であるフランスへ渡りま す。それも首都パリから程遠い郊外の田舎へ活動拠点を移しました。 

音楽そのものを愉しむこと。そして”La Pause(なかやすみ)”のコンセプト

「音楽には3つの大事な要素があると思います。それはComposer(作り手)、Interpreter(演じ 手)、Audience(聴き手)の3者です」(ギヨーム) 

彼らのステージで特徴的なのは、なるべく舞台を取り払いオーディエンスと同じ立ち位置で演奏 する点です。 そしてジャズが入ったりブルースでアレンジしたりといわゆる典型的なクラシックスタイルからは 離れ、フランス国内でのステージでは、最後に皆がシャンソンを歌って終わるといったユニーク な形態を取っています。 今回の日本公演でも「めぐろパーシモンホール」では、舞台を撤去した形でのパフォーマンスが 見られそうです。

「マイルス・デイビス(*4)が言うように音楽にジャンルがあるとすれば、2つだけ。Good one or Bad one.(良い音楽か、あるいは悪い音楽か)」(ギヨーム) 

「シンプルに”音楽を聴く”ということが、例えば気分転換にカフェに行くとか散歩をするような 感覚で、私たちのコンサートに来ていただけたら嬉しいです。”La Pause(なかやすみ)”のコン セプトは、一息入れるとか休憩するような感じで、音楽を通じた癒しの空間をお届け出来たらこ れ以上のことはありません。聴き手であるお客様も一つのコンサートを構成する大切な存在で す」(朋子) 

彼らLA PAUSE MUSICALEの奏でる音楽は、日本では年に数回とそれほど多く聴けるわけではあ りません。 ただ今後も日本公演は継続していき、次回からは病院や介護施設での演奏、ホールより小さめな 場所でのライブなど着々と計画していることを伺えました。 

La musique est un merveilleux professeur pour moi.
(音楽というのは、私にとって素晴らしい先生)

どんなに真面目に練習に取り組んでも、いつミスを犯してしまうか?あるいは神が降り立ったが 如く珠玉の旋律を奏でることができるのか?それらを全て思い通りにコントロールすることは出 来ません。 だからこそ音楽は面白い。まるで人生そのもの… 弦と遊ぶなかやすみ そこにはどんな時間が待っているのか? 

【コンサート概要】
La Pause Musicale vol.5
①2023年5月12日(金)   
めぐろパーシモンホール 小ホール   
開場:18時45分/開演:19時15分

②2023年5月14日(日)   
千葉市生涯学習センター 2Fホール   
開場:14時/開演:14時30分

チケット料金:一般 3,500円/学生 1,000円 (全会場共通)

チケットはこちらのリンクからお求めいただけます。

お問い合わせ:ラ・ポーズ事務局
lpmusicale@gmail.com
043 253 9245

-完-